西荻窪芸術センターのこと

演劇を始めたばかりの若い頃、フランスのアヴィニョン演劇祭へお芝居を観に行きました。
そこで驚くべき何本かの作品に出会いました。観たこともないような演劇でした。鼻血が出そうなくらいに面白かった。
同時に世界と日本の演劇のレベルの差を感じました。俳優のスキルも、アイデアも、コンセプトも、どうにもそれまで私が観てきた演劇では太刀打ちできそうになかった。どうしたらこの場で闘えるのかしら。もしこういう場があったら、自分は何を観せられるだろう?
その時以来、自分の中に命題のようなものが生まれました。
その後、活動していく中で、とても大きな欠落に気づきました。それは自国の文化、自国の演劇について私は何も知らない、ということでした。
日本語で演劇をしているのに、これまでにどんな演劇があったのかを知らないという事実に、急に「何をやってきたのだろう」という思いが湧き、それからは手当たり次第に観劇しました。
能や歌舞伎、狂言、文楽、落語…。
最初は退屈で眠ってしまうこともしばしば(今もよく寝落ちします)。でもだんだんと面白いと思えるところが出てきました。
また稽古を積むうちに、西洋の方々とは違う、私たち日本人独特の身体のあり方、見せ方があるようだと気づきました。それは世界でも「ユニークだ」と認められるような私たち日本人に特有の感性から生まれるもののようでした。
これなら闘えるかもしれない。「観るに値する」と感じてもらえるかもしれない、という予感がありました。
でも、実は当の日本人がそこに誇りを持っていないという現実にぶち当たります。というより知らないのです。私たちが持っている感性が独特で世界でも飛び抜けてユニークであることを。とても勿体無いことだと思いました。
どうにかならないかしら?
という思いで活動していたら、こんな団体が立ち上がりました。
僭越ながら現代と伝統をつなぐ役目を担えないだろうかと。西荻窪という東京の小さな街の六畳一間からそんな試みができたらおもしろいじゃないかと。
もちろん、私まだまだ勉強中です。一緒に学んだり、実験(稽古)してくださる方がいらっしゃいましたら、とても嬉しいです。ご指導・ご鞭撻もお願いしたいです。
応援していただけたら嬉しいです。実は立っているのがやっとです(笑)。

大久保美智子

西荻窪芸術センター  2021年に結成。元々2019年に劇団山の手事情社を退団した大久保の個人屋号だった「西荻窪芸術センター」を団体名に(大久保は西荻窪在住)。短期間の寄せ集めではなく、中長期で稽古を積み美学を共有し発表したいと考えている。その間の俳優・スタッフの生活の保障が目下の大きな課題。できれば心豊かに余裕を持って創作したい。